#6野毛山動物園 -はじめてのどうぶつえん-
「無料」の動物園、野毛山動物園。子どもが訪れる「はじめてのどうぶつえん」としてもおなじみですが、無料ながらも多彩なイベントや動物の展示方法は一見の価値アリ! そんな、毎日でも通える野毛山動物園の魅力を徹底リポートします。
教えてくれた人
野毛山動物園 広報 井川さん
「野毛山は飼育員とお客さんの距離が、ほんとうに近い動物園なんです」
インタビュアー
宋さん
「だから園全体から「あったかい」感じがするんですね!」
無料でここまで楽しめる&学べる!
“はじめてのどうぶつえん”
野毛山動物園の魅力徹底レポート
横浜市西区にある「野毛山動物園」。
昭和26年の開園以降、都市型かつ“無料”の動物園として地元民に愛されてきました。かつては世界最高齢のフタコブラクダ「ツガルさん」や、アジアゾウ「はま子」がいた……というと「あの!」と声を出す県民の方も多いのではないでしょうか?
そんな野毛山動物園は、現在ももちろん無料!
無料ながら
ツキノワグマもいるし、
キリンだっています。
レッサーパンダも、ペンギンもいます。
日本でここだけの希少動物も飼育・展示しており、小さい子はもちろん、県内外の動物好きが集まることでも知られています。
今回はそんな、子どもから大人まで楽しめる野毛山動物園の魅力を、実際に働いている飼育員さんのお話とともにレポートします!
遊園地からはじまった野毛山動物園
野毛山動物園の辺り一帯は、かつて豪商の別荘地。
そこに昭和26年にできた「野毛山遊園地」が野毛山動物園の前身。遊園地の頃、入場料は10円。ゾウが来てからは二倍の20円に値上げ。当時の子どもからしたら、10円は大金。駄菓子がたくさん買えるような金額だったそうです。
昭和39年、遊園地が閉園してから入場料を取らなくなったといいます。
▲広報の井川さん(左)が教えてくれました
野毛山動物園は「はじめて訪れる動物園」なんです。
横浜市には、ズーラシア・金沢動物園とけっこう規模の大きい一日がかりで回る動物園があるのに対して、野毛山動物園は気軽に2時間くらいで回れる、小さなお子さんも連れてこられるような動物園だと思います。
無料なのに、ここまでたくさん動物が見られるんですね! ペンギンなんかもいてびっくりしました。
野毛山動物園には100種類以上の動物を飼育しているのですが、基本的に“有名どころ”と言いますか……「絵本で見たことのある動物」なんです。キリンとかライオンとか、小さい子がひと目みてわかる動物たちを中心に展示しています。
なるほど! ところで……どうして無料でこんなに立派な動物園が運営できるんですか?
以前までは横浜市市営でした。現在も市から管理運営費をいただいているんですけれども、私達公益財団法人「横浜市緑の協会」が指定管理者として、その予算で運営しています。
それに加えてショップの売上や、「アニマルペアレント」というお客さんにいただく寄付ですとか、「ライオン募金」に入れていただいたお金で動物のおもちゃを作ったり、施設をきれいにしたりしています。
お客さんからのサポートもあっての無料なんですね!
その通りです!
66周年ということで施設的に古いところも多々ありますが、昔ながらの檻の展示でも、なるべく動物の動きを見てもらうためにいろいろ工夫をしているんですよ。
そういえば、園内には生態や名前などの掲示物や、ごはんをあげる“台”がいろいろなところに設置されていましたね!
▲園内には生態や個体の見分け方など、手作りの様々な掲示物が
そうなんです。それはほとんどが、お客さんの「声」から生まれたものなんです。
ズーラシアのような広い動物園だと管理スペースが別で、飼育員とお客さんの歩く道が別になっているケースが多いのですが、野毛山の場合飼育員も園内のスペースを歩くので、お客さんの声がよく聞こえるんですよね。
直接話しかけさせていただいて、お客さんと動物のお話をすることもありますし、お客さんたちが動物を見てどういう感想を持っているかを聞いて
「こういうイベントをやればお客さんが楽しんでくれるかな」
「こういう情報があれば小さいお子さんにもわかりやすいな」
「こういう風に台があればお客さんがもっと見やすいだろうな」
と展示方法やイベントを考えたり、例えば食べている様子が見えるように透明なエサの箱を作ってみたりということをやっています。動物には既製品が使えないことが多いので、基本的には飼育員の手作りです。
素敵ですね! 皆さんで思いついたアイディアは、どのように形になるんですか?
基本的には飼育員たちがそれぞれ「委員会」に入っていまして、そういうところで情報を共有し、予算などを相談して実行できるものに着手しています。
担当動物や委員会は基本的に年度ごとに変わるので、いろいろな視点からお客さんの眼を通して動物のことを考えるためのきっかけにもなっていると思います。
皆さん動物のことはもちろん、常にお客さんのことを考えているから、なんていうか園全体から「あったかい」感じがするんですね!
そんな風に感じてもらえたら嬉しいです。
ちょうど今から、ライオンとツキノワグマの「動物のお食事タイム」があるので、ぜひ見ていってください!
大迫力の「動物のお食事タイム」
毎日開催の人気イベント「動物のお食事タイム」は、毎日午後からライオン、ペンギン、ツキノワグマなど、3〜4種ほどの動物で日替わりに行われます。
あっ! 食べた!
ライオンの「ラージャー」は、親が育てることができず、飼育員が哺乳瓶で育てたので、とっても人懐っこいんです。野生の動物ですし、飼育員としてはなるべく親に育ててもらいたいのですが、育てられない時はこうして育てることもあります。
なのでラージャーは飼育員に遊んでっておねだりしたり、常連さんが見に来ると挨拶したりもするみたいで。
いろんなところにお肉を置くんですね。
なるべく動物の行動を引き出し、お客さんに見やすいような位置を考えて飼育員がお肉を配置するんですよ。
キャッ、唸り声がすごい! これはテレビやネットじゃ伝わらない迫力ですね!
ライオンは野生でも鳴き声が数キロ先まで響くと言われていて……ご近所中に響き渡ってますね。「ライオンが鳴いたからごはんにしよう」なんてお宅があるって話も聞いたことがありますよ(笑)。
ニワトリさんみたいですね!(笑)
動物園の動物ってそんなに動き回るイメージがなかったので、毎日こういうイベントをやってくれてるのが嬉しいです。
先程もお伝えしましたが、こういったイベントはほとんどがお客さんの声から生まれたものなんです。野毛山動物園は動物とお客さんだけではなく、飼育員とお客さんの距離もほんとうに近い動物園なんです。
▲ツキノワグマのお食事タイム
飼育員の皆さんは、やっぱりお話好きなんですか?
お食事タイムの方も、本当に楽しそうにお話されていましたが……
そうですね! 昔は「人付き合いが苦手だから動物のお世話を…」なんてイメージもあったんですが、今は逆に話せる人の方が多いんじゃないかと思います。
私も、もともとズーラシアにいたのですが、その頃のガイドでの経験やここに来てからは「ふれあい広場」で、たくさんのお客さんと直接お話をさせていただいたから今に生きているのだと思っています。
実は野毛山動物園でしか見られない、レアな動物も
日本で野毛山動物園にしかいない動物っていうのがいまして。
まず爬虫類館のヘサキリクガメ。リクガメの中では最も絶滅の危機にあるといわれているカメなんですけれども……。
▲ヘサキリクガメ
テレビ番組で見たことあります! ものすごい貴重でぜんぜん見つからないカメですよね!
そうです。国際的に取引が規制されているのですが、密輸されて日本へやってきて、証拠品として押収されたあとに野毛山で保護をしているという動物なんですね。子亀が2016年、2017年と連続で生まれたのですが、国内では初めて繁殖に成功した事例にもなっています。世界の動物園でも30年以上ぶり、と言われていますね。
▲ヘサキリクガメの子亀
世界でも貴重な例なんですね。大きい方のカメは、甲羅がちょっとへこんでいますが……?
これは、過酷な環境で運ばれた時に傷がついたか、もしくは飼育されていた環境の条件がよくなかったのではないかと思われます。
例えば人間が食べる小松菜なんかをエサで大量にあげてしまうと、栄養がありすぎて過成長を起こしてしまうんですよね……。
あとは、カグーと言うニューカレドニアに生息する飛べない鳥なんかも動物園として飼育してるのはここだけです。
▲カグー(写真提供:野毛山動物園)
動物園は皆さんに動物のことを見てもらう、知ってもらうという機能と一緒に、種の保存や保護の観点でも動物を飼育しています。
そういった背景も知ってもらえると嬉しいですね。
動物の周りの背景まで知ると、もっと楽しめるし、地球で今起こっていることも「自分ごと」として考えるきっかけになりそうですね……。
空いた時間にふらりと来て、動物のことを知ってほしい
神奈川県内には他にもズーラシアや金沢動物園といった大きな動物園がありますが、それらの動物園とくらべて、野毛山動物園の魅力というのはどこでしょうか?
やはり地域密着型といいますか、ズーラシアも金沢動物園も広大で一日がかりになるのに対して、野毛山動物園はみなとみらいに行ったついでにちょっと行こうかなとか、午後だけ時間が空いたから来られるのがいいところだと思います。
確かに、近所だったら公園代わりにも使えますよね。私も近所だったら毎日来ちゃってたかも!(笑)
このあたりで育ってたらなあ……なんてうらやましさを感じちゃいますね。
小中学生のお客さんは実際そういう風に利用してる方も多いんですよ。
動物園に普段来ない人とかもいらっしゃるので、それをきっかけに動物を好きになってくれたり、動物のことを勉強してもらえたりしたらありがたいです。
▲ふれあい広場ではモルモットやハツカネズミ、ニワトリなどと触れ合える
お食事タイムやイベントを積極的に利用していろいろな動物の一面を見てもらったり、園内を歩いている飼育員に話しかけたりできるのも魅力だと思っています。
私達飼育員もお客さんの声を元に動物のことを考えて、新しいイベントや展示方法を日々企画しているので、ちょくちょく遊びにきてもらえたらいいなと思っています。
時間がちょっぴり空いたら、野毛山動物園に行こう!
お客さんとの距離が近い“手作り感”も魅力の野毛山動物園。
動物と飼育員の皆さん、そしてお客さんとの距離がとっても近いからこそ生まれた、「親密さ」が園内のそこかしこに形として表れていること。
それをたくさんの人に楽しんでもらうために、無料で続けていこうという志も感じられ、とっても素敵な場所だなと、改めて感じました。
お休みの日はもちろん、ちょっとだけ時間ができた時にも気軽に来られるのに、動物をとりまく環境など、深いところまでいつの間にか学べてしまうのも嬉しいところ。お子さん連れにも、まさにピッタリですね!
▲取材当日は、年賀状用の写真が撮れるデコレーションが。
そんな野毛山動物園では、横浜バンクカードの提示で動物ポストカードがプレゼントとしてもらえちゃいます!
絵柄は定期的に変わるそうで、何度も通って集めたくなっちゃいますね!
ぜひ思い立ったら横浜バンクカードと一緒に、野毛山動物園にお出かけしてみてはいかがでしょうか?
※掲載内容は2018年1月時点での情報です。