#9"アイドル"オカピに会いに行く
世界三大珍獣の「オカピ」。ズーラシア開園当初からの人気者として大切に育てられてきた、まさに”アイドル”。
そんなオカピについて、飼育員の方から特別にバックヤードでお話を伺ってきました!
愛情たっぷりに育てられた世界三大珍獣!
“よこはま動物園ズーラシアのアイドル”
オカピに会いに行こう
横浜や神奈川県の魅力的なスポットをめぐるこの企画。3回にわたり、国内最大級の動物園である『よこはま動物園ズーラシア』からお送りしています。
ズーラシアは、東京ドーム10個分の敷地面積を誇る日本最大級の動物園。約110種の動物たちが暮らしています。中でも“ズーラシアのアイドル”といえば、間違いなく“オカピ”!
1999年のオープン当初から国内初の展示動物として話題になり、園の“顔”にもなっているオカピは、お尻の縞模様がなんともミステリアスな風貌で、世界三大珍獣とも呼ばれている動物です。
「アジア初」だらけだった、ズーラシアとオカピの歩み
オカピが発見されたのは20世紀に入ってから。ジャイアントパンダ、コビトカバと並ぶ世界三大珍獣とも言われ、大昔から姿や生態を変えずに生きてきた珍しい動物のひとつ。
その数はアフリカのコンゴ民主共和国に5,000〜10,000頭ほどしか存在しないと言われており、絶滅危惧IB類の1つにも指定されています。保護区や保護プロジェクトによって種の命を繋いでいる、希少動物なのです。
そんなオカピを日本で最初に飼育したのが、他でもないズーラシア。それまで欧米の一部の動物園でしかお目にかかれなかった彼らがアジアの日本へやってきたのは、ズーラシアのオープンより2年前、1997年のこと。
当時の担当者と獣医師がアメリカの3つの施設で研修を受け、レイラ(メス)とキィァンガ(オス)という2頭のオカピと一緒に飛行機に乗って帰国したそうです。
▲来園した頃のレイラ(左)とキィァンガ(右)
研修を受けたとはいえ、アメリカと日本では気候も環境も違います。
もともとアフリカ原産であるオカピが日本の冬を越えられるのか、エサとなる植物はどのようなものがいいか、どう確保していくのか。さらに臆病な動物であるオカピをどう展示場に慣れさせていくか……実際飼育していく中で初めて知ることだらけ……公開までの1年半は試行錯誤の連続だったそうです。
そんな地道なオカピとの日々は実を結び、ズーラシアのオープンとともにオカピは大人気に。さらに2000年にはレイラとキィァンガの間にピッピ(メス)が誕生、こちらも国内初であることはもちろん、アジア・オセアニア地域での初の繁殖例として世界的にも話題になりました。
ズーラシアで培われた技術をもとに、現在では金沢動物園や上野動物園でもオカピの姿を見ることができるようになりましたが、これはアジアでも日本だけ、もちろん、現在でも国内繁殖の成功例はズーラシアだけ。
そこで今回は、そんな“オカピ”について、飼育担当の森田菜摘さんから特別にオカピ舎のバックヤードでお話を伺いました!
森田さん(右)と、オカピのルル(メス)
オカピはシマウマの仲間じゃない! 模様のひみつは……?
私、初めてオカピを見ました! きれいな顔をしていますね。
目をよく見ると、くりくりっとしていて愛らしいんですよ。近くで見ると、まつ毛もすっごく長いんです。
本当だ! 目は大きくてまつ毛が長いなんてうらやましい……
本来ゴミから目を守るためなので、まつ毛は下向きですけどね。突然ですが、オカピはどの動物の仲間だと思いますか?
足の模様からして、シマウマのようですが……
実はウマではなく、キリンの仲間なんです。草食動物を分類する時は蹄(ひづめ)の数で見分けるのですが、オカピはキリンと同じく蹄が2つに分かれている「鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)」に分類されます。ウマの仲間は蹄の数が1つや3つの「奇蹄目(きていもく)」に分類されるんですね。
蹄の数がポイントなんですね!
もう1つ、キリンとの共通点があります。オスのオカピには角が生えているのですが、キリンと同じように皮膚に覆われているんです。シカなど多くの動物の角はむき出しになっていますよね。
オカピの場合メスには角がないので、そこがキリンと違うところですね。また、キリンはサバンナに広く生息していますが、オカピはアフリカのコンゴ民主共和国の熱帯雨林にしか生息していません。
また、特徴的なお尻の“シマシマ模様“ですが、この模様は熱帯雨林の中で姿をカモフラージュするためだと言われているんですよ。動物園のようなオープンな場所ではどうしても目立ってしまいますが、森林の奥深くだと模様が木の枝にうまく紛れて、身を隠すのにちょうど良いみたいです。
なるほど! 派手だと思っていましたが、実は理にかなった模様なんですね!
舐められると痛い、なが〜い舌
これもキリンと共通したところなのですが、びっくりするほど舌が長いんですよ。大好きなビワの葉っぱを差し出してみましょうか……
想像以上に長いですね……!
オカピの舌の長さは50㎝あると言われていて、この長い舌で上手に葉っぱを巻き取って食べるんです。食事の時だけではなく、目の中のゴミを取ったり、虫を追い払ったり、鼻の掃除をしたりといったことにも使っているみたいですね。
便利! 舌が枝にこすれる音が聞こえますね。
舌はけっこうざらざらしています。
伸びてくる時はそうでもないのですが、後ろに引き込む時にひっかかるようなつくりになっているんですよ。だから舌で触られると、ヤスリでこすられているような感覚があります。おそらく、滑らないでちゃんと葉っぱをキャッチするような役割があると思っています。
なんだか猫の舌みたいですね! ちょっと痛そう……
そうですね、バックヤードツアーでお客さんをご案内するときも、「舐められないように注意してください」とお伝えしています。
「舐められても気にしません!動物好きなので!」っていう方でもちょっと舐められると「痛い……!」って驚かれたりするんです。それにかなり臭いもついちゃいます(笑)。
飼育員さんが教える、オカピのチャームポイント
森田さんが実際にオカピに接して感じた「魅力」ってどこですか?
初めてオカピに触った時は感動しましたね。
動物の毛並みってふわふわに見えても、実際さわるとゴワゴワだったり、脂でべたっとしていたりするのですが、オカピはかなり見た目を裏切らないというか、本当にベルベッドのじゅうたんみたいな手触りなんです。
そうなんですね! この近さで見ても、すっごく気持ちよさそうです。
表面は多少脂っぽくなってはいるんですけどね。熱帯雨林の動物なので、スコールで体温を奪われないように、体表で水をはじくような毛質なんだと言われています。
耳もかわいいんですよ。
ジャングルの熱帯雨林に棲んでいる動物なので、見通しが悪いぶん音に頼っていると言われています。
生きていくための知恵と進化ですね。名前を呼ぶと反応するんですか?
おそらく自分の名前を認識しているわけではないと私は思うのですが、知らない人が急に入ってきて名前を呼ぶと「いつも聞いたことない声」っていうように、首を動かさず耳だけピクッと動かしたりしますね。
オカピの耳の方向を見ていると、今どっちの方向に意識が向いているか、注意を払っているかがわかるんです。
あと……他の動物はまずさせてくれないんですが、オカピは耳の中をさわられるのが好きみたいなんです。
個体差での好みではないんですか?
少なくとも、ズーラシアのオカピはみんな耳の中をさわられるのが好きですね。
キリンやイヌは、首元を撫でられるのが好きだったりするんですけど、オカピはあまり好きじゃなくて……
珍しいですね……!
ズーラシアの個体はオスの方が少し神経質で、体にさわられるのは嫌がるんですが、耳の中だけはどの個体もさわらせてくれるんです。手はかなり汚れちゃいますけどね(笑)
オカピの飼育環境は、まさに“VIP待遇”!
そういえばこの獣舎、思ったより「ケモノ臭」がしないですよね……?
基本的には臭う動物って肉を食べるんです。
オカピは草食動物なので、「思ったより臭くない」って言われることが多いですね。それに、オカピの部屋の壁は他の動物と違って、ヒノキ張りになっているんですよ。
えっ、ヒノキ!
臆病な動物で、びっくりして急に動くことがあるので、ぶつかってもケガしないようにしているんです。扉の内側にまで板を張っている丁寧な作りです。。
コンクリートと違い、木は折れたらその都度直したりする必要があるのでメンテナンスは大変ですが。
やっぱりそれは、オカピが希少動物だからですか?
そうです。獣舎のメンテナンスが多少面倒だとしても、ケガをさせないことを優先しています。
また、やはり暖かい所の動物なので、温度管理にも気を遣っています。日本の真冬の時期に一日中放置をしておくと死んでしまう可能性もあるため、冬場は屋内展示場だけでご覧いただくことも多いですね。
大事に大事に飼育されているんですね……
私も、それだけ大事にされている動物を任されているという責任を感じてオカピたちと向き合っているつもりです。
本来の気候とは全く違う環境で繁殖まで導くことができたのは、そんな体制があったからでしょうか?
繁殖に成功できたのは尿から排卵をチェックして発情を見極め、排卵予測を立てて……オスとメスを一緒にするということを地道にやってきていた結果でしょうか。
オカピは群れをつくらないので、タイミングが悪いときにオスとメスを一緒にしても争いをするだけになってしまうんです。
最初の飼育員の方から受け継がれてきた、皆さんの丁寧なお仕事が、今のオカピの命を繋いでいるんですね!
現在でもオカピは関東の3園(ズーラシア・金沢動物園・上野動物園)、アジアの中でも日本でしかその姿を見ることができません。それほど希少な存在ですし、見た目にも不思議な動物なので、姿を見るだけでも感じ取っていただけるものは大きいと思います。
暖かい季節には屋外で活動している姿をご覧いただけますので、ぜひ、オカピに会いにきてください!
“オカピ”をおうちに連れて帰ろう
まさに“ズーラシアのアイドル”という表現がぴったりの“オカピ”。
その愛されぶりは、グッズ売り場にも表れています。
オカピづくし、と言っても過言ではないオカピ推し!
(もちろん他の動物グッズもたくさん置いています)
ぬいぐるみはもちろん、人気の「オカピサブレ」をはじめ、おかきとピーナッツのおつまみ系お菓子「おかピー」まで、小さい子はもちろん、大人のお茶請けまで全世代に対応できるオカピグッズで溢れています!
オカピの魅力に触れた帰りには、ぜひオカピグッズをお持ち帰りしてみるのはいかがでしょうか?
想像を遥かに超えていた、よこはま動物園ズーラシア
オカピはその希少性もさることながら、ひときわ愛情をかけて育てられた存在だということが飼育員さんのお話でわかりました。
何もかも手探りの状態で、未知の生物の命を繋ぐ……ズーラシアには、それができるだけの施設と、そこで働く飼育員の皆さんの想いが揃っていたんでしょうね。
これまで3回に渡ってお送りしてきた「よこはま動物園ズーラシア」の魅力徹底レポート。取材を通して、ただ動物を展示するだけではない同園の志の高さや、飼育員さんが惜しみなく注ぐ動物への愛情、そのほかさまざまな気付きや感動、知識を得ることができました。
これもひとえに仕事のお忙しい合間を縫って、同園スタッフのみなさまが親身に取材へのご協力をして頂けたおかげです。みなさま寒い中本当にありがとうございました。
そしてもちろん、3回だけではとても紹介しきれなかった同園の魅力はまだまだたくさんあります。
続きはみなさまの目で!ぜひズーラシアに足を運んで自分ぴったりの楽しみ方を見つけてみてください!
動物園が好きな方はもちろん、「動物園なんて子どもの時以来だった」なんて方が行けばもう絶対に感動しちゃうこと間違いなしです!(取材クルーは全員そうだったので終始はしゃいでしまいました)
そんなズーラシアでは横浜バンクカードの提示で一般入園料金から20%割引になります!
5人まで割引になるので、ご家族で行くのにもぴったり!
横浜バンクカードと一緒に、よこはま動物園ズーラシアにみんなでお出かけしてみるのはいかがですか?
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※掲載内容は2017年12月時点での情報です。