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伝統のホテルニューグランド<洋食編>

#10伝統のホテルニューグランド<洋食編>

日本の「洋食文化」は横浜からはじまりました。
その礎を築いたのが横浜が誇るクラシックホテル「ホテルニューグランド」。
現代まで受け継がれる洋食の定番から今となってはレアなものまで……そのストーリーに迫ります。

ドリアにナポリタン、そして幻の料理「チャップスイ」とは? 
横浜が産んだ「洋食文化」の礎に迫る


2017年に90周年を迎えた、横浜が誇るクラシックホテル「ホテルニューグランド」。

第二次世界大戦後のGHQ接収時代はマッカーサー元帥が滞在するなど、歴史に翻弄されつつも今なお当時の面影を残す歴史深い港町のこのホテルは、異国文化が集い、またその文化が街へ、日本中へと広がっていく文化拠点でもありました。

特に“食”には、「ニューグランド発祥」がとっても多いんです。

日本人の好みに合う、外国の味……まさに「洋食文化」はニューグランドから生まれたと言っても過言ではないでしょう。

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有名どころでは、今なにげなく食べている「ドリア」や「ナポリタン」、「プリン ア ラ モード」も、実はホテルニューグランド発祥。

今回はそんなホテルニューグランド伝統の味についてのお話です。

体調の悪い人をいたわる気持ちから生まれた「ドリア」

ホテルニューグランドの味の祖を築いたのは、「料理の貴公子」と言われた初代総料理長のサリー・ワイル氏。

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▲サリー・ワイル氏

当時からメニューには「料理長はメニュー以外のどんな料理の注文にも応じます」と書かれていたそうで、お客様の要望を可能な限り叶えるスタイルで国内外のVIPをもてなしたと言われています。

1930年ごろのある日、スイス人の銀行家が体調を崩し、シェフに「体に優しいメニューを」とリクエストして作られたのが「野菜と一緒に炊いたご飯にエビのクリーム煮をかけて、オーブンでこんがり焼いた料理」。

このオリジナル料理にイタリアの貴族「ドリア家」の名前をつけたのが、ドリアの始まりだったそうです。

この“ドリアはじめて物語”、かなり有名な話なのですが……

ドリアって、具合が悪い時に食べるイメージありますか?

そんな疑問も含めて、今回はホテルニューグランド「THE CAFE」シェフの長谷信明さんにドリアやナポリタンといった定番から、隠れた定番(=裏番)まで、「ニューグランドの味」についてお話を伺いました!

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▲「ザ・カフェ」料理長・長谷さん

発祥の「ドリア」にコクがあるのに優しい理由

——具合が悪い時にドリアを食べるイメージがなかったのですが、現代のドリアとどう違うのでしょうか?

長谷さん:現在一般的な「ドリア」といえば、バターライスにシーフードのクリーム煮を乗せてチーズがかけられて焼かれているものですが、ニューグランドのドリアは、チーズは仕上げの焼き色をつける目的で少しだけ振る程度ですね。

——だからコクがあるのに、くどさを感じないんですね。

長谷さん:ニューグランドの場合はバターと野菜で炊いたお米に、ニューバーグソースとベシャメルソースで…海老と帆立のクリーム煮みたいなものを作るんです。

それをお米の上にかけてグラタンソースを合わせています。

ソースが水っぽく薄まらないように、エビとホタテから出てくる汁をきちんと詰めること。ベシャメルソースを作る時…私たちは「ベシャメルをかく」と言うのですが、かく時にきちんと練り上げてコシとツヤを出すようにしています。

——お米にまで旨味をきっちり含ませているんですね。

長谷さん:そして、オランデーズソースは卵黄に火を入れながら泡立てるのですが、その時分離しないように67度前後の温度になるよう火を入れるところなどがコツですね。

——惜しみない手間と繊細な温度管理によって、この優しい味が完成するんですね!

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そんなシーフードドリアは、他にもエビを二種類使うなどのこだわりが随所に。コクがあるソースがたっぷりのエビやホタテ、お米に絡んで一体化し、まさに「喉越しの良い」逸品に仕上がっています。

「ごちそう」と呼ばれるものは、ある程度元気で食欲がある時にしか食べられないものがほとんどだと思います。

食欲がなくても食べられるのに、「ごちそう」を食べた時の華やかな気持ちが湧いてくるってとても尊いこと。恥ずかしながらこのオリジナルを今回初めて食べた記者も、食欲が落ちた時には、このドリアを欲しがるだろうな……と感じました。

初代の料理長から受け継がれた、まさに“ニューグランドスタイル”が詰まった代表的な一皿と言えるでしょう。

ケチャップを使わない、発祥の「ナポリタン」

日本特有のパスタ料理といえば、ナポリタン。

その祖は、二代目総料理長、入江茂忠氏が戦後考案したと言われています。

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▲入江茂忠氏

進駐軍の兵士が食べていた、“具なしのケチャップスパゲティ”をヒントに、生のトマトで作ったソースに玉ねぎやハムといった具材を合わせたのが、“ナポリタン”の始まり。そこにピーマンが入るなどのアレンジが加わり、ケチャップを使う洋食店や喫茶店でおなじみのナポリタンもその時期から広まっていったと言われています。

“もっちもち“の茹で加減に秘密

——ナポリタンは庶民的なイメージがありますが、ニューグランドのものは料理としてとても繊細なものに思えます。

長谷さん:フレッシュなトマトを使うので、甘みや酸味のバランスには気を使っています。バランスが崩れると酸っぱくなってしまったり、甘くなってしまうとトマトの味が消えてしまったりするんですね。今はトマトも甘いものが多くなってきていますから。熟していても酸味のあるものを選んでいます。

あとは、にんにくと玉ねぎをよく炒めて、甘みと香りを出してあげることですね。

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——風味がとてもいいのはそういうこだわりがあるからなんですね。麺の茹で加減に関してはいかがですか?

長谷さん:茹で加減はですね、前の日にボイルして一晩寝かしてあるんです。

——えっ 前の日に茹でておくんですか!?

長谷さん:もちもち感を出すためですね。今の時代だとアルデンテが主流のパスタじゃないですか? コシがないって言うお客さんもいらっしゃいますが、もちもちした食感を大事にしています。

アルデンテに茹でてから流水で冷やし、オイルをまぶしてバットで寝かしておくんです。

——なるほど、茹ですぎとも違う、絶妙な食感はそういう工夫があるんですね。

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私たちが思い描く普段の「ナポリタン」に対し、ニューグランドのナポリタンはまさに“よそ行き”という言葉がぴったりの上品な味わい。

特にソースは、パンで最後までぬぐって食べたくなります。

ニューグランド料理の“裏番”チャップスイ

さて、ここからは“裏番”……ニューグランドの“隠れ名物”をご紹介します。

皆さんは「チャップスイ」、という名前の料理、ご存知ですか?

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“ニューグランド発祥”の二大洋食メニューに対し、こちらは、発祥自体は謎に包まれているメニュー。一説では、19世紀に中華料理がアメリカに伝わって生まれたメニュー、とも言われています。日本にどう伝わってきたかはよくわかっていませんが、ホテルニューグランドではこのメニューが由緒正しき“宴会用料理”として残っているのです。

長谷さん:私はニューグランドに入った頃、最初は宴会場の担当でしたが、その頃からチャップスイは作っていましたね。

アメリカ式の中華丼、と言えばいいんでしょうか。

具材は豚肉・鶏肉・たまねぎ・たけのこ・さやいんげん・白菜・しいたけ・セロリ・もやし・ホタテ・エビなどを醤油ベースのあんかけにしています。

——ニューグランドのメニューとしては意外な印象ですが、聞いているだけでおいしそうですね。

長谷さん:いや、やっぱりね……おいしいんですよ(笑)。それぞれの具材は火の通り具合が違うので、具材は個々にソテーしているんです。

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——え! 別々に…! ホテル品質の「ごちそう」にするための手間とはいえ、すごいですね……おいしそう……

長谷さん:宴会用の特別メニューなので本日は作ることができかねますが、ぜひ食べていただきたいですね。

——ニューグランドで宴会……いつか絶対食べたいと思います!

家庭料理としてはすたれたものの、現在でも歴史のある洋食店などで見かける気になるメニューである「チャップスイ」。

出自には謎が多いけれども、これももちろんニューグランドで代々受け継がれている「味」なのでしょうね。

「ニューグランドの味」の本質とは


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▲初代総料理長サリー・ワイル氏と弟子たち

ここまでホテルニューグランドの「メニュー」について焦点を当ててきましたが、そのメニューの「味を受け継ぐ」ということはいったいどういうことなのでしょうか。

——長谷さんはいつからこちらで料理人として働いていらっしゃるんでしょうか。

長谷さん:私は、昭和の最後の年にこのニューグランドに入りました。下積みの頃は、まず「鍋屋」と私たちは呼ぶのですが、鍋をひたすら洗うほか、じゃがいもをひたすらむいたり、お米をひたすら研いだり……と、小僧さんのようなお仕事をしていましたね。

早く仕事をしなければ次の仕事をやらせてもらえない。じゃあどれだけ手を早く、綺麗に鍋を洗うのか、そういったことを考えながら仕事を続けていました。

——実際に料理を作れるようになるまではどのくらいあったんでしょうか。

長谷さん:初めて作った料理はキャロットグラッセでしたね。入って一週間くらいでしたか……鍋が大きいので火の通り具合が中心と外側で変わってしまうんですよね。何回も何回もひっくり返してね。

自分たちの時は先輩が作ったものを見て、次に作らせてもらう……という感じで教わってきていました。

実際、ここの料理をひとりで作れるようになるのは、1年くらいかかりましたが、お客さんに喜んでいただけるような「ニューグランドの味」になるまでには、5〜6年くらいかかったんじゃないでしょうか。

昔の人たちの言うことにはでたらめな部分もありましたけど、今になって、俺たちのことを育ててくれたんだなとつくづく思うときがありますね。

——レシピで……というよりは、実際に作り、自分の目で見て、自分で味わって、その「味」を継いできたんですね。

長谷さん:技術的なところで言えば、変わっていくところはあります。

例えば凍った食材を、昔は水でとかしちゃいけませんでした。今は、流水でとかすのが当たり前ですよね。

そういったところは時代によって変わっていって、新しいものを取り入れているところはあります。

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核の部分、コアな部分は逆に守っていかなきゃいけない。スローフードじゃないですが1から100まできちんと丁寧に自分で作ること、そういうところがホテルニューグランドが大切にしている「味」なのではないでしょうか。

——味、というよりは、初代料理長からの志が代々継がれてきたんでしょうね。

長谷さん:そうかもしれませんね。

自分は子どもたち(※若手の料理人のこと)には「おいしいものを、お客さんが喜ぶものを作りなさい」という言葉をよく言っています。

——喜ぶもの、ですか。

長谷さん:新人の頃は、早く出さなきゃ、という気持ちが先に立ってしまう子が多いんです。

もちろん早く出さなきゃっていう考えも必要かもしれませんが、そうではなく、おいしいものを出そう。おいしいものを出して、プラス、早く出してあげようという気持ちで作りなさい。と伝えていますね。

——お客さんに喜んでもらおうとする気持ち、それこそが「ニューグランドの味」を守ることにつながるんですね。

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変わらない“気持ち”が詰まった、ホテルニューグランドの料理

もうすぐ100年、そしてその先へと受け継がれるであろう「ニューグランドの味」。

長谷シェフからお話を伺って、技術や材料の変化によって、変わるものはあろうと、それを提供する人々の気持ちは初代総料理長、サリー・ワイル氏の時代から変わらず受け継がれていると感じました。

そんなホテルニューグランドの「ザ・カフェ」は横浜バンクカード提示でお会計から5%OFFになります。

横浜バンクカードといっしょに、横浜の「洋食文化」の元祖とも言える味を体験しに行ってみるのはいかがでしょうか?

そんな「ニューグランド発祥」は、洋食だけではありません。次回は「スイーツ編」。ニューグランドで生まれたスイーツの定番と裏番について、パティシェの方にお話を伺います。

ホテルニューグランド「コーヒーハウス ザ・カフェ」

【住  所】〒231-8520 神奈川県横浜市中区山下町10

【電話番号】045-681-1841(代)

※掲載内容は2018年2月時点での情報です。