#14金沢動物園 -絶対見たい「三大スター」-
四季折々の自然を楽しみながら動物たちと触れ合える金沢動物園。ここに来たらぜひ見たい「三大スター」と期待のニューフェイスについて飼育員さんにその魅力と飼育の裏側を教えてもらいました!
超VIPなコアラ、増えすぎ(?)カンガルー、マンモスみたいなゾウ、そしてカピバラ。
金沢動物園で絶対見るべき三大スター&ニューカマーを飼育員が徹底解説
横浜市南部にある金沢動物園へ行ってきました! 豊かな自然の中にあり、世界の希少草食動物を中心に飼育している同園では、動物を生息地別にアメリカ区・ユーラシア区・オセアニア区・アフリカ区の4大陸エリアに分けて展示し、檻の無い「無柵式」という展示方法を採用。
より自然に近い状態でエリア別に動物を観察することができるんです。
今回は、金沢動物園に来たら絶対に見ておくべき人気者たちをご紹介! それぞれの担当飼育員さんたちに、見どころや動物たちの知られざる一面について伺いました。
<お話を伺った方々>
▲広報担当:高橋 麻耶さん
▲オオカンガルー飼育担当:川嵜 立太さん
▲インドゾウ、カピバラ飼育担当:庄子 泰之さん
見逃し厳禁! 金沢動物園の人気三大スター
まずは、金沢動物園に来たらぜひ見て体験して欲しい、不動の人気を誇る三大スターをご紹介したいと思います。
1.お昼時にぜひ会いに来て! 金沢動物園一の“偏食スター”コアラの驚きの食生活
コアラが1日18〜20時間寝る動物だということをご存知ですか? しかも起きて活動するのは明け方と夕暮れ時、真夜中が多いんだそう。つまり動物園の中で、私たちが彼らの起きている姿を見られることは通常ほとんどないんです。しかし! この金沢動物園は違います。毎日13時半にランチタイムを設け、飼育員がコアラのエサであるユーカリの葉を交換するので、その時間だけはコアラの動いている様子やユーカリを食べている様子がご覧いただけるんです。
ちなみに神奈川県内でコアラが見られるのは金沢動物園だけ。日本全国でも8箇所しか飼育していないんだそうです。そんな希少な存在であるコアラについて、広報の高橋さんに、お話を伺いました。
コアラを飼育している動物園はとても少ないようですが、これにはどういった理由があるのですか?
コアラがユーカリしか食べない特殊な食性の動物であることが、大きな理由のひとつだと思います。例えばゾウのようになんでも食べる動物であれば、青草が足りなければ竹を切っておこう……など、代用品を足すことができるのですが、コアラはユーカリ以外は食べません。
また、日本には自生していません。
確かにコアラといえばユーカリを食べているイメージですが、それ以外は全く食べない超偏食動物なんですね……!
さらに、コアラは新鮮なユーカリの新芽しか食べないのですが、新芽は気温が10度を下回る環境ではつかないんです。今(※取材時は2月)横浜のユーカリ農場では作れません。さらに、ユーカリ自体は市場に出回っているものではないので、よそで買うこともできません。農場に契約して作ってもらうもの、なのです。
食べ物=生命そのもの、だから切れるようなことがあってはならないですよね。金沢動物園ではどのようにコアラのライフラインであるユーカリを確保しているのですか?
コアラたちにユーカリを与えるためには、ユーカリ入手のノウハウを持つ動物園であることが必要なんですね。その難しさゆえにコアラを飼育するところが少ないんじゃないかなと思います。金沢動物園では、横浜のほかに沖縄、鹿児島、三重県にもユーカリの契約農場を持っています。常に必ず2系統以上から入るようにしているのですが、もちろん新鮮なまま空輸で運ぶため、コストもかかっています。今入ってくるユーカリは9種類あるのですが……
まだ何か関門が!
コアラによってユーカリの好みが異なる上に、日によって好みも変わるので、常に2〜3種類のユーカリをブレンドしています。
日本中にごはんどころがあって、好みにうるさくて……貴族ですね!
VIP待遇ですね(笑)。他の動物とは比べ物にならないくらい、エサの確保も大変ですし、繊細で神経質なところがある動物なので、特に気を遣って育てられています。神奈川県では唯一見られる場所で、イチオシの動物なので、ぜひユーカリの葉を交換する「ランチタイム」を見に来てください!
金沢動物園でも一番人気の「コアラ」。活発な姿を見ることができる貴重なランチタイムはまさに必見です! 食べているユーカリを見て「あれが飼育員さんの苦労の結晶……」と思いを馳せてみるのも楽しいかもしれません。
コアラのいる「オセアニア区」はカンガルーの展示場もすぐそば。金沢動物園に来たら、まずはここからどうぞ!
2.超ド級のキバを持つインドゾウのボン君! シャワータイムには何が起こるかお楽しみ
金沢動物園では3頭のインドゾウを飼育。中でも最年長(41歳)のボン君は、2メートル以上もある長いキバと6トンの巨体(キバ、体重ともに国内のアジアゾウの中では最大級!)で、お客さんたちには「マンモスみたい」と言われることもあるほど。
ご覧いただきたいのは、毎日12時半から1時間行われるシャワータイム。夏は水、冬はお湯が放たれるんですが、インドゾウは水浴びが大好きなようで、この通り嬉しそうな表情で近づいてきます!
ちなみに、取材時は2月の寒い時期だったのですが、お花見シーズンになるとゾウの展示場近辺の桜が満開になり、ゾウと桜を同時に楽しめるスポットとして賑わうんだとか。金沢動物園のアイドルとして名高いゾウの実態や飼育の苦労などを、担当飼育員・庄子さんに伺いました。
シャワータイムの時、ゾウたちは水に顔を近づけて何をしているんですか?
鼻に水を溜めて飲んだり水浴びをしたりしています。右と左の穴に貯めると10リットルくらいは貯められるんですね。今日みたいに寒い日はお湯を出すので、体温を上げるために飲むことが多いですね
ゾウ飼育の上で大変なことはなんでしょうか?
人間の力ではどうにもならないところ、ですね。 ボン君は6トンありまして、6トンの動物を動かすのは力では無理ですよね。 訓練をして、ゾウさんに協力して動いてもらうんです。 体重計に誘導したり、足を上げてケアをさせてもらうなど、信頼関係を築かなければできないケアがたくさんあるんですね。信頼されないことは事故の原因につながりますし、万が一事故になったらゾウさんが悪者扱いされちゃってかわいそうです。 なので、金沢動物園では最短で6年間かけてゾウ担当者を育てるんです。一人前の飼育係になって、次の担当者を育てることができるようになるまで、ですね。
6年もかかるんですね!
ゾウ専属が4名と補助の監視係であたっています。ゾウは一対一で関わって、もしいたずらをされたら……私たちなんて吹けば飛ぶような存在ですから(笑)。悪気はなくても踏み潰してしまったり、突然地震が起こってびっくりしたりする場合もありますから、適度な距離感も必要です。
攻撃的になると、どういうことをするんですか?
ボン君の場合は、普段はとても穏やかなんですが、年に3回くらい「マスト」という男性ホルモンが活発になる時期があります。タイとかインドの象使いも、その時期は放っておくくらいです。
40日間くらいは衝動を抑えきれないこともあるので、なるべく距離を置いてそっとしておかなければなりません。ウンチを投げてきたり、鼻水を溜めて飛ばしてきたり、扉に向かって体当たりしてきたり……悪気はないのでしょうが「自分が一番強いんだ」と思う時期のようです。
オラオラ系になっちゃう時期があるんですね。男の子って感じ……
10歳くらいまでは一緒に入って飼育をしていたのですが、ボン君はマストがきたので、一緒には入らず言葉だけでいうことを聞いてもらっています。
年齢を重ねて少しはおとなしくなってきたのか、最近は爪切りなど協力的にさせてくれるようになりましたね。
言葉だけで……そんな信頼関係をゾウと築くためのコツはなんですか?
ゾウの嫌がることをしない、というのに尽きると思います。とにかく褒めて伸ばすことですね。何かしてもらえたらきちんとご褒美をあげています。これって人間も同じですが、ただ叱っても嫌な気持ちにさせて「仕返ししてやろう」とか思われたら悲しいですから。
どうしてもダメなことをしたら叱るのも大事でしょうが、幸いなことにそんな悪いことはしないんですよね。ゾウの性格にもよるのかもしれませんが。
悪いことをしないのは、やっぱり皆さんの飼育体制で「いい子」に育ったってことだと思います。
ゾウたちは頭がいいし、すぐに応えてくれるんです。
退屈しないようにしてあげるために、スタッフとの意見交換や国内のゾウ飼育員との意見交換会、海外から情報を得て環境を定期的に変えています。最近ではゾウ同士、低周波で会話をしているのでは、なんていう研究もあるんですよ。
ゾウさん同士で何を話しているのか……いつか聞いてみたいですね!
インドゾウたちは表情が豊か……と言えるかどうかはわかりませんが、よく動く長い鼻を動かして、遊んだりエサを食べたりと様々な動きを見せてくれます。
ボン君の大きさもさることながら、ゾウ同士の「関わり」も見どころのひとつ。
桜の季節の「ゾウお花見」をはじめ、ぜひゆっくりと眺めていただきたいところです。
3.珍しい鳴き声も聞ける!? 約70頭のカンガルーが手の届きそうな距離でお出迎え
カンガルーって、どんな鳴き声をしているかご存知ですか?
なんと金沢動物園では、手が届くほどの距離で20頭以上のカンガルーを見られる「ウォークスルー形式」を採用。鳴き声だって間近で聞けてしまうんです(実際の鳴き声は園内で確かめてみてくださいね)。
目の前をピョンピョン飛び跳ねていく元気な子や、いつの間にか足元近くまで寄ってくる人懐こい子など、その個性も様々。まさに「カンガルー天国」なこのエリアでは、思わず立ち止まり時間を忘れて眺めてしまうこと請け合いです。
間近で見れば見るほど興味深いカンガルーの生態について、担当飼育員の川嵜さんにお話を伺ってみましょう。
ものすごく近い距離で、こんなにたくさんのカンガルーを見る(囲まれる!?)のは初めてです! カンガルーが人間を怖がったり、来園者とトラブルを起こしたりしないんでしょうか?
カンガルーは人間を怖がりますよ!
ここに入っていただくお客様には、この足元の低い柵で仕切られた通路の上のみ通っていただくなど、一定のルールを守った上でご覧いただいています。カンガルーの方も、人間が柵を越えて近づいてはこないと理解しています。そのルールが守られているから、人間は危害を加えないものだとわかっているんでしょうね。
柵に入っているカンガルーと、そうでないカンガルーの違いは?
子育てを始めた頃のメスは子どもを守るため気が立っているので、昔はお客様を蹴るなどしたこともあったんですよ。なので、そういう時期のカンガルー、血気盛んなオスのカンガルー、逆に臆病で人間を怖がる傾向のカンガルーは別のエリアに入れて隔離しています。
色々な性格のカンガルーが暮らしているんですね。
繁殖群れ、若いオスの群れ、袋から顔を出し始めた小さな子どもと子育て中の母親など、様々なシーンを間近で見られるという意味では貴重な場所ですね。
飼育する際に気を遣っているところは?
まー、この子たちはなかなか死ななくてですね(笑)スペースが足りなくなるんじゃないかと困ってたりするんですが、感染症には弱いんですよね。
昔、ちょっと擦りむいたところから感染して、化膿してしまった結果指をなくしてしまった、なんてカンガルーもいて……。なので、そういった異常をいち早く見つけて処置しないと生き死にに関わるんですよ。
全部で70頭以上いるカンガルーを1頭1頭すべて細かく見ることは難しいんですが、その上でもきちんと毎日状態をチェックして、いち早く病気や怪我を発見することが大切です。
これだけカンガルーがいると、出産なども大変なのでは?
出産は滅多にお目にかかれません。子どもは産まれてすぐに母親のポケットに入りますし、あまり出産の兆候もないので気づかないことが多いんですよ。もぞもぞしてるから産んだのかな、と(笑)。ちなみに、子育て中以外のメスは常に妊娠していると思って間違いないと思います。
ええ! どういうことですか?
カンガルーの受精卵って、袋の中で育っている子どもが出ていくのを着床せずに待っているんです。そして、産まれたらすぐに次の受精卵が着床するんです。
なので、次々に子どもが産まれて、年間約10頭のペースで増えているんですね。今ですら結構スペースがいっぱいいっぱいな状態なので、これ以上増えたらちょっと困っちゃう(笑)。
海外からの貰い手はあるのですが、湿度に弱いのでそういう国だと逆にすぐ死んじゃうこともあるみたいですね……
増えて困る、なんて冗談みたいに言いますけど、こんなに順調に増えているのは、川嵜さんたち飼育員さんがきちんと個々のカンガルーに気を配って毎日お世話をしてるからなんでしょうね!
手に触れられそうなくらいの位置まで近づいてくるカンガルーたちの愛らしさに、取材クルーも展示場からなかなか離れられなかったほど。朝一番はほんとうにカンガルーたちが元気に目の前を跳ね回っていて、まさに「圧巻」のひとことです!
オセアニア区では、コアラとカンガルーを望む芝生の上でお弁当を食べることもできますよ!
新たな仲間に加わったばかりの超癒し系ニューカマー
三大スターのほか、決して見逃して欲しくないのが2017年12月に金沢動物園に現れた新星、カピバラです。
その見どころと、飼育員さんたちの知られざる苦労エピソードをご紹介したいと思います。
これぞ癒し系! 思わず目を細めること間違いなしのカピバラ入浴シーン
毎日午後2時半は、カピバラのお風呂タイム。
打たせ湯を浴びお湯に浸かるカピバラたちの姿が見られます。
「お湯に浸かるカピバラ」の姿は、全国的に知名度の高いものになってきましたが、なんともいえない表情で身を寄せ合う彼らの姿を見ると、思わずニンマリと顔が緩んでしまいます。高い柵もなく、ちょうど見やすい目線の位置に風呂桶があるので、存分にその姿を目に焼き付けることができちゃいますよ。
そんな、昨年12月に来園したばかりのこの愛くるしいニューカマーについて、担当飼育員の庄子さん(インドゾウと兼任されているそうです!)にお話を伺いました。
カピバラたち、いい表情していますね(笑)。ちょっと気になったのですが、カピバラってお風呂上がりに湯冷めはしないんでしょうか?
毎日14時半から15時半までお湯を出し続けているので、閉園時間である16時半くらいまではお湯が暖かい状態を保っているんです。カピバラは暖かいところが大好きなので、お湯が出ている間はほとんどずっとお湯に浸かっています。
そして閉園後は暖房のついたお部屋にすぐ移動するので、体が冷え切ってしまうということはないですね。お風呂の近くに暖房のついた小さな小屋もあるので、そこで体を温めることもありますよ。
どうしてお風呂に入れようと思ったんですか?
この子たちは秋田の大森山動物園からやってきたんですが、そこの動物園では「カピバラの湯っこ」というお風呂に入るカピバラが有名なので、それに倣って本園でもお風呂に入れることにしました。野生の動物でも、寒い時期は暖かい場所を好む習性があるということを知っていただける機会になればと思っています。
お湯が出るのをソワソワと待っているカピバラもすごく可愛いです!
実はあの打たせ湯の竹、よく流し素麺をやっていて竹の細工が得意な職員の手作りなんですよ(笑)。
手作りなんですか!?
展示場にあるもののほとんどが、園内にあった資材をリサイクルしたものなんです。小屋は横浜のイベントで使われていた廃材で作ったものですし、風呂桶も廃品を利用したもの。どうやって見ていただいたらお客さんに楽しんでもらえるか? ということを考えながら、労力やコストをあまりかけず色々と自分たちで作ってみる、というトライアンドエラーを行っています。実は手作り感満載なんですよ(笑)。あの小屋も廃材を利用して作って、みんなで運んだんですよ。
お風呂も小屋もDIYだなんて凄いですね……! ちなみにカピバラを飼育する上で大変なことはなんでしょうか?
まだ飼育しだして日が浅いのでなんとも言えませんが、しいて言えばお風呂の中でウンチをしないようにトレーニングできたらいいなと思っています(笑)。うまくいけば、お風呂以外の場所で排泄してくれるようになるそうなので。カピバラはお湯が大好きなので、もっと長時間お風呂に入れてあげたいんですけど、不衛生なので今はできないんですよ。
大好きなお風呂に長く入れるようになるといいですね!
ちょこちょこ動き回る愛くるしいニューカマー。
日々改良されていく展示形式も注目! お風呂タイムは本当に気持ちがほっこりするので、お帰りの前にはぜひカピバラたちに会いに来てみてください。
愛情をかけられた動物たちに会える“ピクニック”ができる場所
金沢動物園の人気者たちは、可愛いだけ、大きいだけではなく、人間と同じようにそれぞれユニークな個性・生態を持っているんですね。
動物はもちろん、印象的だったのは、スタッフの皆さん同士がとても仲が良いこと!
広々とした敷地だけではなく、この良い雰囲気の中で育てられているからこそ、動物たちとの信頼関係を築くことができ、それが園の魅力に直結しているのだと感じました。
動物を世話し、それをお客さんたちにどう楽しんでもらうかに心を砕いている飼育員の皆さんの工夫にも、お越しの際には注目していただけたらいいな、と思います。
お子さんから大人まで楽しめて、さらにインスタ映えも抜群の金沢動物園で、ぜひ動物たちと触れ合ってみてはいかがでしょうか。
金沢動物園は、横浜バンクカードの提示で入園料が20%引きになります!(※5名様まで)
ぜひ、これからの季節、横浜バンクカードと一緒に、家族でお出かけを。
※掲載内容は2018年3月時点での情報です。