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「富士屋旅館」 -温故知新が体感できる老舗旅館

#26「富士屋旅館」 -温故知新が体感できる老舗旅館

2002年の廃業から17年の時を経て、この春蘇った老舗宿「富士屋旅館」。レトロ好き必見の、旅館の歴史と魅力に迫ります。

生まれ変わった湯河原のシンボル。旅館の魅力と見どころを思う存分聞いてきました!

今回は旅館の再生を手掛けたひとりである、際コーポレーション株式会社の市川さんに全館をご案内いただき、現在の富士屋旅館の魅力と見どころを教えていただきました!

まずは湯河原温泉の歴史と富士屋旅館の歩みから

湯河原温泉一帯は、奈良時代に編纂された「万葉集」の一句にも登場するほど、歴史ある温泉地です。

明治中期には藤木川沿いに10軒ほどの温泉旅館が建ち並び、静かな温泉保養地として、国木田独歩、夏目漱石、与謝野晶子、谷崎潤一郎らの作家にも愛されてきたといいます。その、“10軒ほどの温泉旅館”の中のひとつが、この富士屋旅館です。

富士屋旅館は明治9年の開業から、たくさんの地元民や著名人に愛され、親しまれてきますが、温泉街そのものの衰退により、2002年に惜しまれながら廃業してしまいました。

それから十数年。

「もう一度湯河原を元気にしたい!」という観光協会など地域からの要望もあり、横浜銀行と地域経済活性化支援機構が共同出資して設立された「かながわ観光活性化ファンド」の資金を活用した、富士屋旅館再生計画の構想が始まります。建物のリノベーション、運営は際コーポレーション株式会社が一任することとなります。

そして2019年2月、たくさんの人の想いと長い時を経て、「富士屋旅館」は再び生まれ変わったのです。

湯河原駅からタクシーで7分ほど。千歳川沿いを走ると、緑に覆われた富士屋旅館が見えてきます。レトロで重厚感のある入り口から、昔の映画に足を踏み入れたような気分になりました。

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現在の富士屋旅館は、旧館、洛味荘(らくみそう)、新館の3棟の建物で構成されています。いずれも築年数が51~96年と、歴史的価値の高い建物です。今回はこの3棟と大浴場、レストラン「瓢六亭(ひょうろくてい)」を順に案内していただき、旅館の魅力や見どころを教えていただきました。

「旧館」で感じる大正ロマン

最初にご案内頂いたのが、大正12年に建てられたという「旧館」です。

扉を開けた瞬間、大正時代にタイムスリップしたかのようなレトロな空間が広がります。

写真2

元々は2部屋だったところを1部屋使いに変えたため、広々とした空間になっています。

旧館はほかの2棟と比べ損壊がそれほどひどくなかったため、「使えるものは極力使おう」と、天井、柱、ふすま、窓ガラス、欄間障子(らんましょうじ)などそのまま残し、当時あった姿を再現しているそうです。

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ぴったりと閉まらないふすまや、少しいびつな窓ガラスも、大正時代の物を残しているからこその“味”なんですね。温もりが感じられるような、ホッとするような、どこか懐かしい内装です。

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中でも特に印象的だったのが、繊細な欄間障子(らんましょうじ)。

現在では見る機会もなかなかなく、作れる職人も少ないそうですが、「運よく残っていたものの、組子(障子の柄の部分)がポロポロ取れて、歯抜け状態だったんです。際コーポレーション工事部隊のみんなでピースを再現し、ひとつひとつはめ込みました」と、市川さん。

「新しく作り変える」ではなく「古い物を残して生かす」という、プロジェクトに関わっているみなさんの強い信念が感じられました。

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また、ノスタルジックな窓から見る景色も格別です。

関東地方が梅雨入りをしたこの日、気が滅入るほどの大粒の雨が降っていましたが、この部屋から見る雨には不思議と風情があり、なんとも美しい風景でした。

この窓から春にはしだれ桜、秋には紅葉と、四季折々の景色が楽しめるそうで、どんな季節、どんな気候の日にも訪れても、素敵な風景を見せてくれることでしょう。

ここは大人の秘密基地

「旧館」続いてのお部屋は、当時の匠と現代の匠たちの遊び心が溢れる一室です。

扉を開けるとまず、レトロな圓窓(えんそう)が出迎えてくれます。

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富士屋旅館では、至る所でこうした優雅な雰囲気を感じることができます。当時この辺りには芸者さんが頻繁に出入りしていたそうで、その頃の面影が残っているからかもしれません。圓窓をシルエットで楽しむなんて、昔の人は洒落たことを考えますよね。

そしてこの客室のチャームポイントは、なんといっても隠し扉です。

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こちらを開けると寝室に続きます。

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昔の映画のような、雪見障子!こちらも元々あったものを残しています。

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圓窓に雪見障子。当時の匠の遊び心や、細かなこだわりが感じられるお部屋でした。

そして昔の匠の想いを現代の匠たちが汲み取り、ひとつひとつ大切に再現されていることを感じました。遊び心は時代を越えて、受け継がれています。

新旧が融合した「洛味荘」

続いて案内していただいたのが、昭和26年築の「洛味荘」です。

洛味荘は「床は外れて土が見えていたり、天井が抜けていたりと損壊が激しく、かろうじて骨組みが残っている状態」でしたが、階段や手すり、障子など、運よく残っていたものもあり、手を加えたり直したりしながら活用しているそうです。

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「こちらの部屋も、床は抜けていたので新しくしましたが、ガラス障子やふすまは残っていました」というように、洛味荘は古いものと新しいものが共存しているので、どれが古いものかな?と探しながら、楽しんで泊まっていただきたいです。

古いものの見分け方のひとつが、「ゆがんでいるかどうか」です。確かにこの部屋のふすまも、左右に全開にすると左側が大きく空いています。

写真8

先ほどの旧館の“ぴったり閉まらないふすま”もそうですが、新しく作り変えたとしたらこうした隙間が空くことはなく、古いもの、残ったものを使っているからこその現象なのだそう。

何気なく過ごしたら気づかないような、こうしたレトロな発見が楽しめる部屋です。

また、この部屋にはくつろぎスペースがふたつあるのも特徴。

茶の間に一般的な広縁が設けられているほか、寝室にもロッキングチェアーの置かれた小スペースがあります。

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市川さんと一緒に案内してくださった、富士屋旅館・支配人の苗代さんは、「“ゆっくり過ごす”を愉しむ場所」とおっしゃっていました。

観光したあとに戻る場所、ではなく、最初からここに来てのんびり寛ぎたい。そんなお部屋でした。

洋室という選択肢もある

続いてご案内いただいたのが、「新館」です。一番築年数が浅いことになりますが、それでも昭和43年築。日頃慣れているような、洋室で過ごしたいというかたに向け、洋風の客室に作り変えられました。

無駄なものがない、シックで落ち着いた内装。天井が高く取られていることで、面積以上に広く開放感のある空間になっています。

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旧館、洛味荘、新館と、ここまで見て気がついたのは「全ての部屋のインテリアが異なる」ということです。

富士屋旅館に置かれているテーブルや椅子、チェストなどは、際コーポレーションのかたがたが全国の骨董市などを巡り、「いつかどこかで使いたい」と買い付けてきた中から、コーディネーターのかたがお部屋に合ったものを選び、配置しているのだそうです。

こちらの洋室には、重厚感のある和風なアンティークチェストが置かれ、不思議と雰囲気にマッチしていました。

ひとつひとつ骨董市などで仕入れるため、一点ものも多いのだそう。お部屋の家具にも注目しながら泊まっていただきたいです。

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何度も入りたい、温泉

「歴史的価値の高いものを残し、外観などの面影を守ろう!」というコンセプトでリノベーションされた中、唯一すべて作り変えたのが浴室。今までのお風呂では機能的に合わない点や、浴室は綺麗なものがいいと希望されるかたが多いためです。

大浴場は、思い切って2階のお部屋を取り除き、天井を高くすることで解放感のある空間になっています。

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また、廃業前の客室のお風呂は温泉を引いていませんでしたが、リノベーションするにあたり、旧館と洛味荘ではお部屋でも温泉が楽しめるようになりました。

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ひのきの香りが心地よい、清潔感のある浴室。部屋に備え付けなので、好きな時間に好きなだけ入浴することができます。

湯河原温泉は、皮膚病、筋肉痛、リウマチ、神経痛、冷え性などの効能が期待できるそう。ここで日頃の疲れを洗い流したら、続いて食事処へ向かいます。

さばきたての鰻がいただける

富士屋旅館のリノベーション、運営を一任している「際コーポレーション」は、旅館・ホテルの運営のほかに和洋中さまざまなレストランを運営している会社です。そのため、従来の“旅館にあるレストラン”ではなく、“食事だけでも満足できる、独立したレストラン”を目指したのが、この「瓢六亭」です。

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仕入れたあと庭の池に放した鰻を、さばきたてで焼いていただけるとあって、鰻料理は人気の定番メニュー。季節に合った旬の食材がいただける、月替わりの懐石もおすすめです。

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また、「先日は“ほたるの宴”があったので、祭り用のディナーを用意しました」というように、地域の祭りやイベントに合わせたメニューを作るなど、訪れるときどきで違った味を堪能できるよう工夫されているのだそうです。

週末は、富士屋旅館へ行こう

館内をすべてご案内いただき感じたのは、富士屋旅館が「温故知新」をどれほど大切に思っているか、そして、時代を越えて受け継がれた「お客様に楽しんで泊まっていただきたい」という、匠たちの想いや遊び心でした。

「レトロ風」ではなく、しっかりと歴史を刻んだ、味わいの深い富士屋旅館。是非この機会に、大正ロマンを堪能してみてください。

ご紹介した富士屋旅館と旅館内の料理屋 瓢六亭は、ハマトク限定特典があります。
富士屋旅館のご予約時に優待のご利用をお伝えいただき、カウンターでカードをご提示いただくと、ご夕食のコースを5千円分グレードアップ!
さらに瓢六亭にてカードをご提示いただくと、お好きなお飲み物を1杯サービス!瓢六亭は宿泊のお客様以外でも、お食事だけのご利用も可能です。
限定特典が盛りだくさんのこの機会に、横浜バンクカードを用意して富士屋旅館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

次回は、旅館の再生ストーリーや裏話、見どころの詳細などを改めてご紹介します。

富士屋旅館

【住  所】〒259-0314 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上557

【電話番号】0465-60-0361

瓢六亭

【住  所】〒259-0314 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上557

【電話番号】0465-46-6091

※掲載内容は2019年6月時点での情報です。