新江ノ島水族館 -クラゲの生態編-

#1新江ノ島水族館 -クラゲの生態編-

水族館の入場者ランキングでも毎年上位にランクインするほど全国的な人気を誇っている、神奈川県藤沢市にある『新江ノ島水族館』をご紹介していきます。

インタビュアー秋山さん

インタビュアー

秋山さん

「不老不死のクラゲがいるって本当ですか?」

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

新江ノ島水族館

飼育技師 唐亀さん

「ニホンベニクラゲのことですね。」

関東トップクラスの人気水族館!新江ノ島水族館でクラゲの知られざる生態や 秘密について飼育員さんに聞いてみた。

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横浜や神奈川の魅力にスポットをあてるこの企画、今回伺ったのは神奈川県藤沢市にある新江ノ島水族館。 水族館の入場者ランキングでも毎年上位にランクインするほど、全国的な人気を誇っています。

そんな新江ノ島水族館の中でも、近年、アートで幻想的な演出が老若男女から人気を集めているのがクラゲエリア。

実は新江ノ島水族館は旧・江の島水族館の開業当初から、クラゲ研究にも力を入れていることをご存知でしたか?

もちろん研究分野だけでなく、館内自慢の「クラゲファンタジーホール」では、常時約14種類のクラゲを幻想的に展示されており、ふわふわと美しく泳ぐクラゲに多くの人が癒されています。

眺めているだけで心地良いクラゲですが、生活模様や飼育の仕方など、水族館に行くだけではわからないことがたくさん。

ということで、今回はそんなクラゲの魅力や知られざる生態、水族館での展示だけではわからない面白さについて探るべく、新江ノ島水族館のクラゲ飼育員である唐亀正直さんにお話を伺いました!

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どんなクラゲでも食べようと思えば食べられちゃう?(笑)

インタビュアー秋山さん

まずはクラゲの基本的な生態について教えてください。クラゲの90%は水と言われていますが、それ以外はどんな成分なのですか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

水分の他は主にタンパク質で、筋肉のような働きをしています。クラゲは全身が、胃や心臓などすべての機能を一つにしたようなイメージです。心臓がないので、全体に取り込んだ栄養を全身に行きわたらせるために拍動という動きをするんです。

インタビュアー秋山さん

クラゲというと、中華料理など食用のものも身近ですよね(笑)。食べられるクラゲと食べられないクラゲの違いは、どこにあるんでしょう?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

違いは、流通と調理のしやすさだと思います。今、食用クラゲとして流通しているものは6種類。

料理方法としては、ミョウバンで固めたクラゲを塩漬けにして、水抜きをしてから、筋肉をきゅっと締めた状態にします。そのため、クラゲ自体のかさの部分が肉厚な種類が流通しているそうです。

ですから、食べられるか食べられないかというよりも、食用に向いているかいないか? という違いですね。例えばあまりにも大きい個体だと、加工に手間がかかることと、味が落ちるということで、市場に食用として出回っていないそうです。

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インタビュアー秋山さん

つまり、食べようと思えば全ての種類が食べられる……?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

そうですね、食べようと思えば食べられると思います。実際、当館の職員でも一通りのクラゲを食べた方がいますよ(笑)。

食用クラゲの種類も様々で、高級中華料理に出るような、一番美味しいとされているのはビゼンクラゲで歯ごたえや食感が強いのが特徴です。

一方スーパーのお惣菜としてよく見かけるものはホワイトクラゲいう種類で柔らかい肉質を持っています。 また、アメリカやメキシコで食べられているキャノンボールクラゲという種類も今では多く出回っています。

インタビュアー秋山さん

なるほど……! 全種類食べちゃった飼育員さんがいらっしゃるんですね(笑) 次の質問です。クラゲには光る現象があると思うのですが、それはクラゲ自身が発光しているからですか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

2パターンありまして、一つは外部の光を反射することで光ります。カブトクラゲなどの<クシクラゲ>に分類されるクラゲです。

彼らは、ラグビーボールのような形をした体に櫛板という板が筋のように並んでいて、泳ぐ時にはそれをパタパタと起こしたり倒したりします。そこに光が当たると、光が筋状に流れるように反射させて綺麗に見せてくれます。

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新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

もう一つは、オワンクラゲやオキクラゲといった、触られたり直接揺さぶられたりした時に刺激を受けて光るクラゲです。

彼らは自らがそんなに強い光を発しないので、ブラックライトを当ててあげると強制的に光らせることができます。オワンクラゲに関しては、この種だけが持つ緑色蛍光タンパク質が発見され、2008年に下村脩さんがノーベル化学賞を受賞されて注目を集めましたよね。

インタビュアー秋山さん

クラゲ自身がピカピカと大きな光を放っているわけではないんですね!

永遠に生き続けるクラゲがいるって本当!?

インタビュアー秋山さん

それではクラゲの一生についてお聞きしたいのですが、卵の状態からどのようにして、あの“ふわふわ”の状態になっていくんですか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

基本的なクラゲの生活環は、まず卵からプラヌラという幼生になり、それが物に付着してイソギンチャクのようなポリプという状態に。

そしてエフィラというひらひらしたお花のような形状を経て、皆さんが想像するような、ふわふわと浮いた状態になっていきます。

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インタビュアー秋山さん

あの成熟した状態になるまで、何度も変態していくんですね! ちなみに「永遠に生き続けるクラゲ」という存在を聞いたことがあるのですが……。

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

ベニクラゲのことですね。彼らは親が卵を産んで⇒ポリプができて⇒ポリプからクラゲが出る……というクラゲの一般的な生活環で進化するのではなく、卵を介さずにポリプになるんです。

つまり、親クラゲがストレスを与えられるとポリプに戻る。これは遺伝子的にはひと繋がりなので、「若返り」や「不老不死」という表現で有名になりました。

クラゲ自体がクラゲからポリプに、ポリプからクラゲになることを繰り返してずっと生き続けているわけではないので、厳密にいうと“死なない”とは少し概念が異なるのですが、遺伝子的に以前の状態に戻るという不思議な生態を持っています。

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インタビュアー秋山さん

では平均的な寿命もあるのでしょうか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

例えばミズクラゲが本州など、四季のはっきりした所でタマゴからクラゲになる生活環のワンターンが1年位です。浮遊するクラゲの期間は数か月です。 クラゲによっては、1年ぐらい浮遊するクラゲの姿でいる種類もありますが、一方で1日程度しかもたない種類もあります。 ポリプの状態で飼育していれば、数十年維持しているものもあるんですが、一度クラゲになってしまうと、そのうちかさがしぼんできたり破けたりして、拍動ができなくなって栄養が回らなくなり、力尽きてしまいます。

でもクラゲはそうなる前に卵を産むので、次の子孫を残します。つまり、皆さんが良く知っている状態のクラゲは“繁殖を行うための形態”とも言うことが出来るんです。

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インタビュアー秋山さん

なるほど、私たちが知っているクラゲって、実は貴重な状態なんですね。

クラゲが好物のクラゲもいる

インタビュアー秋山さん

クラゲたちの食事についてもお聞きしたいのですが、普段どんなものを食べているんですか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

種類にもよりますが、主にプランクトンですね。当館で一番多いのは、熱帯魚屋さんでも売られている、ブラインシュリンプという小さな甲殻類の生物の乾燥した卵です。

ブラインシュリンプは、乾燥した状態にならないと卵がかえらないという特殊な生物で、海水に入れると24時間で孵化します。子クラゲの時にはほとんどのエサがブラインシュリンプですね。

開館中も水面から赤い煙のようなものが落ちて来たら、裏でブラインシュリンプを与えているので、その時は「あ、クラゲがエサを食べているのかな」と思って見ていただければ。

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インタビュアー秋山さん

ブラインシュリンプ以外ではどのようなエサを?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

クラゲが成長してくると食性も変わってきます。当館ではシラス、甘エビ、コペポーダというプランクトンを冷凍で固めたものや、牡蠣などを与えることもあります。 種類によってはそのまま与えますし、小ぶりなクラゲであれば細かくして与えています。

インタビュアー秋山さん

ちなみに、どんなふうに捕食するんですか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

クラゲは動きがとても緩慢で、エサを食べている瞬間というのは、我々が見てもわかりにくいことがほとんどなんです。でも、わかりやすい種類のクラゲもいるんですよ。

伸ばした触手にブラインシュリンプがくっついて、一気に集めて触手を引き、かさの真ん中の口で舐めるような動作をするクラゲとか。
また、アカクラゲやシーネットルといった、リボンのような長い触手を持つクラゲは他の種類のクラゲが好きなんですよ。

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インタビュアー秋山さん

え……! それ“共食い”ってことですか!?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

そうですね(笑) 正確には種類が違うので共食いとは言わないのですが。 アカクラゲなどにはミズクラゲを与えています。ミズクラゲを細かく刻んで与えてあげると、触手についた後、“口腕”という口の周りの場所に引き寄せて、お団子のような状態になって体の下に沈んでいきます。

その他で言うと、ウリクラゲという種類は、自分と近い種類であるカブトクラゲを食べます。ウリクラゲはカブトクラゲが近くにいると、そのままズルっと飲み込むので食べている瞬間がわかりやすいんですよ。

インタビュアー秋山さん

クラゲがクラゲを食べるなんて衝撃です……。エサにするクラゲも館内で飼育したクラゲなんですか?

新江ノ島水族館飼育技師 唐亀さん

はい、エサのミズクラゲのほとんどは当館生まれです。年を取ってへこんだりかさが切れたりして形が悪くなった場合には、切り刻んでエサにしています。

当館では展示に出すためはもちろん、エサとして増やすこともクラゲ飼育の目的なんです。ミズクラゲを与えた方が大きく成長するので、大事な役割を果たしてくれています。

種類によっては偏食のクラゲもいて、先ほど話したウリクラゲはカブトクラゲしか食べないので、そうなるとエサの確保が大変になってきますね。

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いかがだったでしょうか?

クラゲを食べるクラゲまでいるなんて、衝撃ですよね!

なおブラインシュリンプのエサやりは1日3回行っており、昼と夜は開館中に見られるとのこと。水面に赤い煙のようなものが見えたら“エサやりタイム”の可能性が高いとのこと。

その様子は是非とも新江ノ島水族館に足を運んでみなさんの目で直接確認してみてくださいね!

新江ノ島水族館

【住  所】〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸2-19-1

【電話番号】0466-29-9960

今回は唐亀さんから基本的なクラゲの生態について学んだことで、クラゲへの理解がぐっと深まりました。次回は近年明らかになったクラゲにまつわる驚きの新事実や、気になっている方も多いであろうクラゲの飼い方などについてもお聞きしますよ!

※掲載内容は2017年10月時点での情報です。

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